整理内容と目的
本ページでは、政府の介入による市場変化について整理を行う。
政府の介入手段
政府が市場に介入する方法としては、「価格規制」、「数量規制」、「課税」、「参入規制」の4つに分類することができる。
上限規制について
定義
上限規制とは、政府が市場価格よりも低い価格に設定することである。
結論
財の不足、すなわち「超過需要」を引き起こすことになる。また、死荷重を発生させ、社会余剰を均衡時よりも小さくさせる。
もし、この結論を忘れたとしても、需要曲線と供給曲線を描き、市場価格よりも低い価格にラインを横軸と平行に引けば確認できる。
(参考)社会余剰とは、生産者余剰と消費者余剰を足し合わせた余剰のことであり、「市場全体でどのていどの便益が生まれたか?」を図る指標である。より平易に言えば、市場の良さを図る指標である。詳細は、下記リンクを参照のこと。ja.wikipedia.org
下限規制について
定義
下限規制とは、政府が市場価格よりも高い価格に設定することである。
結論
財の超過、すなわち「超過供給」を引き起こすことになる。また、死荷重を発生させ、社会余剰を均衡時よりも小さくさせる。
数量規制について
定義
ある量以上に多く生産することを禁止する規制のこと。
結論
市場価格が高いままになる。(グラフで言うと、規制数量の部分で、横軸に対して垂直な供給曲線が引かれることになる)。また、死荷重が発生する。
課税(生産者課税)について
結論
供給曲線が上にシフトする。(税率で課税する場合は、上シフトに加え、傾きも変化する。)また、死荷重と政府余剰(税収)が発生する。式として表すと下記のようになる。
消費者価格(Pc) = 生産者価格(Pq)+税金(t)
また、消費者価格とは、お店で目にする価格のことである。一方生産者価格とは、生産費用に利益を足した価格のことである。
参入規制について
定義
市場に自由に参入できないようにする規制のこと。
結論
死荷重が発生する。また、この規制による死荷重は、規制緩和をした際の余剰(メリット)と等しくなる。
留意点
- 「上限規制」、「下限規制」と目にすると、それぞれ「市場価格より高く設定すること」、「市場価格より低く設定すること」と勘違いしやすい。
- 実際には、その逆で上限規制が「市場価格より低く設定すること」、下限規制が「市場価格より高く設定すること」を意味する。
- これらはすべて、完全競争市場における政府介入に伴う市場変化についてまとめたものである。
- ただし、これらの経済学的知見は、その社会状況が完全競争市場かどうかを厳密に判断せずとも、当該事象を分析をするための有効なツールとなる。
- 労働市場における「最低賃金値上げ」の問題が良い具体例であるといえる。
まとめ
- 市場に政府が加入すると、すべてのタイプの介入において死荷重が発生し、総余剰が最大化されない。
- 価格の上限規制→市場価格よりも下に設定→超過需要
- 価格の下限規制→市場価格よりも上に設定→超過供給
- 課税(供給者)→価格が上昇
- 数量規制→価格が高いまま留まる
- 参入規制→死荷重=規制緩和メリット
参考文献
- ミクロ経済学入門の入門
- はじめての経済学. 第10回 政府の市場介入と財政 Part-1.
- 従量税・従価税と社会的余剰. 瞬時にわかる経済学.
- 消費者価格. コトバンク